2代目 干瓢うぉっち

サウンドエンジニア/クリエータ観点の話を中心にダラダラ覚え書きするブログ

インパルスってなんだ?サウンドクリエータから見たインパルス応答(IR)

インパルス信号とは

 電磁気学音響工学などの教科書によく書かれている「インパルス信号」。時間幅が0で高さ無限大のパルス信号のことを言う。

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▲ 理想的なインパルス信号


 ただ、僕らが扱っているデジタルオーディオは必ず信号をサンプリング周波数に基づいて時間サンプリングしていて、信号の大小を記録しているので、「時間幅0で周波数的な情報を持つ」はありえない。レベルも16bit 24bitのように表現可能なレベル幅に上限がある。

 デジタルオーディオにおけるインパルス信号では、1サンプル目で最小→最大、2サンプル目で最大→最小に遷移する2sampleの信号のことを便宜的に言う。

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▲ 行って帰ってくるまでがインパルス


 つまり、Fs=48kHzのインパルスと、Fs=96kHzのインパルスでは、後者の方が秒間2倍サンプリングされているので幅が1/2になる。アナログの場合このサンプリングという考えがない(常に連続)ので幅が0に近似する。インパルス信号はサンプリング周波数(fs)に依存する。


インパルスは全帯域に成分を含む信号のこと

 サウンドリエータの観点で言えば、インパルスは「全帯域に成分を含む信号」と覚えておくとよい。このインパル信号は超低域から高域まですべてのサイン波を足し合わせた結果で表現でき、ことデジタル化されたオーディオの世界ではこの帯域というのはサンプリング周波数(Fs)に依存する。つまりFs=48kHzのインパルスと言えばサンプリング定理より24kHzまで、Fs=96kHzのインパルスであれば48kHzまでの成分を一様に含む信号ということになる。

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▲ インパルスの時間波形とスペクトログラム

TSP信号(SS信号)とインパルス信号

 全帯域に成分を含む信号としては、TSP(Time Stretched Pulse)がある。これはインパルスの時間を伸長したもので、低域から高域まで音程が連続で変化する信号のことを言う。つまりサインスウィープのこと。下から上へスウィープすれば「プィィイ」、逆は「ピュン」というような音になる。

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▲ スウィープアップによるTSP信号。周波数特性を測るときによく使う。インパルスやホワイトノイズよりも精度が高いが、過渡的なノイズが入りやすいというデメリットがある。


 TSPの利点は音響解析などの分野でS/Nが稼げる(一様な信号レベルに対する時間経過によって、対時間での相関が稼げる)といった測定観点での話が主で、クリエータ観点で言えばあまり関係がない(のでスウィープだと思っておけばいい)。

 どちらも全帯域に成分を含むのは同じだが、決定的に違うのは、かかる時間がインパルスの方が圧倒的に短いということ。TSPの場合は「スウィープする時間」かかるが、インパルスは幅が最小の信号なので、発音中の環境の過渡的な変化を(ほぼ)気にしなくてよい。


インパルス応答(IR)でわかる「環境の特性・性格」

 ある音が発生したときに、その発生した環境によって音の残り方は変わってくる。

 例えば、
・お風呂場では残響時間が短く、高い音から低い音まで残りやすい。
・森の中では、残響時間が長く、高い音と低い音が消えやすい。
・羽毛布団の中では、残響時間がごく短く、高い音が消えやすい。

 など環境によって音に与える特性変化は様々ある。

 インパルス信号には全帯域に成分を含むので、これらの環境下でインパルスを鳴らしてやると、全体域でどのように音が残るか(出てくるか)の性格がわかる。クリエータ観点で見れば「時間」と「レベル」の2点だ。

・時間:音の残響時間
・レベル:どの帯域(高さ)の音が減衰しやすい/残りやすい

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▲ インパルスとホールのインパルス応答


 これが非常に画期的で、環境の特性を得るのにいちいち環境をシミュレーションしたりする必要がなく、インパルスを入力するだけで、出力として特性がわかる。
 
 ある環境にAという音を入れるとBになって出てくる。あるアンプのキャビネットにAを入れるとBになって出てくる、というように、入力Aに対するBという特性・性格変化が起きる。

 このBがどれだけ変化したか、を示すものがインパルス応答の特性に相当する。空間に限らず、電子回路、機器など、入力に対してパッシブに影響を与え出力されるものであればなんでもよく、特性を得られる対象というのは様々ある。

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▲ インパルス応答の活用例。図はギターアンプシミュレータ(Ampritube4)

インパルス応答で得た特性を畳み込む(Convolute)

 インパルス応答で得た特性をドライな信号に掛け合わせることによって、疑似的にその特性を再現することができる。この行為を畳み込む(Convolute)という。

 
 たとえば、Convolution Reverbであれば、ある森林で得たインパルス応答(IR)をピアノの音色に畳み込めば、森林でピアノの音色を鳴らしたのと同じ残響感を疑似的に再現できるし、Ampシミュレータでも、あるキャビネットから得たインパルス応答をギターの音色に畳み込むことで、そのキャビネットを通したF特感を再現できる。

インパルス応答のIRデータは、「状況の再現」であることに注意

 では、森林のインパルス応答データがあれば、森林で鳴ってる感をすべて表現できるかというと、そうではない。

 IRは当然、インパルスの発生地点から特定の位置(10m離れた位置とか)で、特定の時間だけ取得したものなので、それを畳み込めばすべてその状況を模した音になるということには注意が必要。

 たとえば、コンサートホールであれば、観客席の前列か後列かによってIRは異なるし、舞台上の演者が左にいるのか、奥にいるのか、という位置によってもIRは変わる。フルオーケストラのマスターにコンサートホールのIR リバーブを畳む、というのはよくやりがちな事例で、それっぽくはなるが、ものによっては不自然に感じる場合もあることに注意したい。

2代目「干瓢うぉっち」

ごあいさつ

 新ブログの記念すべき第一回目。

 今回は特に話題は用意しておらず、簡単な挨拶と言うことで。

 どうぞよろしくお願いします。

前身の「初代 干瓢ニッキ」

kanpyo.hatenadiary.org

 前身である「干瓢ニッキ」にて最後にブログ記事を書いたのが3Dアニメーションの「RWBY」に感銘を受けた時の話で、もう4年も前の話になる。随分と間が開いてしまった。

 「干瓢ニッキ」自体は大学生のころ、それまでWebサイトのトップページにHTML直で書いていた日記の管理がめんどくさくなったのがきっかけで、ブログに移行したのが始まり。14年前だ。名前も当時てきとうに決めたものだ。

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▲ 前ブログの初稿。やる気ないけど文豪だなんだぜ・・・みたいな斜に構え感はやっちゃう


 特に何か目的を持って書き綴っていたわけではなく、1週間に1回程度の頻度で思うことを主観多めでダラダラ書く、まさに日記的立ち位置から始まった。14年以上経った今、改めて見ると奇声を発したくなるような痛い記事も多めである。やんちゃって怖い。

 記事投稿が激減したのは2010年ごろにTwitterを始めたタイミングだろうか。手軽さゆえ、即時的な雑談話はTwitterが肩代わりし、そのような記事は殆どなくなった。ニコニコ動画に楽曲をアップした時や、イベントに参加した際の告知など、何かイベントごとがあった時の告知のついで、というような記事が半数を占めていたわけだが、その機会も次第に減って、いつしか「干瓢ニッキを維持する」という半義務的なノルマ感のみが残った。

 そしてモチベーションも自然消滅し、結局書かなくなって今に至る。

本ブログ 立ち上げの目的

 仕事の報告書や説明資料などで長文を書くことはあっても、自分の思うがままに長文を書く機会というのは殆ど無くなってしまった。長文を書けない状況に「まぁしゃーねぇか」と思いつつもどこか燻るようなもやもやした気持ちがずっと続いており、目的を持ったログとして長文を書くという行為をまたやりたいと思ったのが切っ掛けである。

 他の発信の場としてはTwitterがあるが、Twitterでは140字という文字数制限がある。僕の場合下書きの段階で140字を超えることが多く、その都度添削して文字数を減らしてからツイートをするわけだけど、結局長文を書きたいのだなと思う。しかし僕には長文を書く場というのは「干瓢ニッキ」しかない。

 とはいえ、荒廃してよくわかんなくなってしまった「干瓢ニッキ」の延長として仕切りなおしで書くのもなんだかぶれていて書きづらいし、かといって数百日というエントリーを整理するのも気が遠くなる。

 ということもあって、今度は自分なりの「目的」をもって新しく始めようと思い立ち、この有様だ。

 社会人になって、10数年余。ハードウェアエンジニア、サウンドエンジニア、サウンドリエータ(現職)と様々な経験をして、今でも元気に音屋をやってる。と、学生時代に夢想していた自分に報告しておく。

今後について

 今後は特にノルマを設けることはせず、自分の音楽の話、レビュー、エンジニア/クリエータ観点での技術的な話を中心にログを残していくつもりだ。身の内にまつわる甘口話から、ググってもあまり出てこないような音響技術や信号処理など突っ込んだ話まで、浅い話を深く掘り下げたいと思っている。

 仕事や趣味で都度思うことも沸いては(Twitterで話すことじゃないななどと思いながら)発散することなく霧散する、を繰り返してきたわけだけど、それら情報資産が誰かの役に立てばいいなと思いつつ。